ボトルネック以外をいくら直しても無駄なのはソフトウェアだけではない

資本主義下における労働は資本主義下における労働であるので、利益を追求する必要がある。わたしは、ソフトウェアあるいはインターネットサービスで労働を行なっているので、これからソフトウェアあるいはインターネットサービスの労働の話をする。さて、ソフトウェアあるいはインターネットサービスで労働をする場合、「組織として利益を追求する」という動きにとってボトルネックになっている部分(部署というよりは、仕事におけるいわゆる「バリューストリーム」の構造だったりいち部分だったりを指す)以外をいくら改善したところで、利益には繋がらない。

わかりやすい話として、たとえばビジネスモデルがわやであれば、いくらエンジニアリングやデザインがシャキッとしていたところでそれは売り上げにはつながらない。まあ、エンジニアリングがシャキッとしているとコストの削減にはつながるのはそうだし、自分が直したコードやインフラ構成によってコストがウン千万減らせたとかあるのでエンジニアとしてはやりがいのある部分ではあるし重要な仕事ではある。とはいえコストカットには限界がある。利益の基本は売り上げでないと、スケールしていかない。同じ仕事をしていても、「売り上げが十分にある環境」でないと、その仕事で得られる利益はどうしても小さくなってしまう。これは「高速化やインフラ最適化できるスキル」に価値がないという意味ではなく、「売り上げが出てない組織」では、せっかくのそのスキルを持て余してしまう、という話でもある。

もちろん、エンジニアリングがシャキッとしていることは、売り上げを増やすことにもつながる。内部品質が高いソフトウェアは、新たな要望、要求に高速に応えることができるので、内部品質高く開発、改修ができるエンジニアチームは、その分だけリリースを加速することができる。これは売り上げのタネをそのぶんだけ高速に蒔くことができる、ということだ。しかし、どちらにせよ、ビジネスモデルがわやだったら、いくら高速にリリースしたところで、結局売り上げは上がっていかないことになる。これは痩せた畑にいくら高速にタネを蒔いたところで収穫量は頭打ち、みたいな話だ。これも、「エンジニアリングを持て余している」状態だと言える。

そしてこの話はエンジニアリングに限らない。たとえば、いくらデザイン(ここで言うデザインはいわゆる「体験のデザイン」も含む)がシャキッとしていても、そのデザインを実際に実現してリリースできるようなエンジニアリングやデリバリー体制がなければ、その場合結局「良いデザインを持て余している状態」だと言える。

だから、この例で言うとまずソフトウェアあるいはインターネットサービスを提供する組織においては、「ビジネスモデルがシャキッとしていること」はエンジニアリングが利益につながる前提条件だし、「そのビジネスモデルで達成すべき目標を達成するために必要な時期に必要なモノが出せるようにしてある状態」は「デザインの力でよりよい体験を実現する」ための前提条件となる。こんな感じで、「ある仕事が利益につながるための前提条件」が労働においては無数にある。この前提条件のうち、「満たされていない部分」がいまのボトルネックだ。

とはいえ、ここからが現実の難しいところで、とうぜん、これらが最初から完璧うまく回るなんでことはない。結局のところ「どこがボトルネックなんだっけ?」ということはやってみないとわからないことが多いし、「やってみる」ためには「まずビジネスモデルをシャキッとさせるのが前提なので、シャキッとしてから動きましょう」とか言っている場合ではない。常に、「やってみながら今のボトルネックを認識して、そのボトルネックに対して手当てを行う」ということをやらなければならない。これは正直いってかなり大変なことだ。(自分も含んだ)人間の感情も絡むしね。しかし、それをしない限り、せっかくの良いスキルを持て余してしまうし、そうなると離職者が続出する。これはもう経験的にそう(逆に言うと離職者が続出しているところは「そこがボトルネック」なのではなくて、「その先にボトルネックがある」と言う場合がある。離職者が続出する理由は必ずしもこの限りではないが)。

いろいろ書いたけれど、結局はソフトウェアの高速化と同じで、ボトルネックになっているところ以外にいくら投資してもそれは「持て余して無駄にしてしまう」わけで、実際にやってみてボトルネックを観察して、ボトルネックを正しく認識してそこを愚直に直していくしかないのだ。ただ、ソフトウェアだったら高速に試行錯誤をして高速にフィードバックを得て試行回数を稼げるが、これが組織となるとそうはいかないのが難しいところなのが大変なんだよね。最近でかいボトルネックをひとつ解消して、それにはすごくやりがいも達成感もあったし実際評価もされたので良かったんだけど、次のボトルネック(何度も言うけれど、それは別に特定の部署が、とかそういう話ではなくて、構造だったりいろいろなものが前提として存在していて、それがボトルネックとなる)の解消をする気力が湧かない。1ヶ月くらいスタン状態でも許してもらおうと思う。また頑張るので

しかし、何度でも思うが、本当は寝て過ごしたい。

そのあとtwitterに書いたこと: