組織やチームの慣性力に負けない心構え

組織やチームはそれぞれルールや文化、仕組みを持っている。この仕組みやルール、文化はときに外部から見ると「アンチパターン」に陥っているようなこともある。そのとき、「アンチパターンを抜け出してベストプラクティスを」と言うのは簡単だけど、実際にそこから抜け出すのは「言う」のと比べるととても大変なことだ。なぜなら、多くの仕組みやルールは複雑かつ有機的に絡まり合って現在の「仕事のフロー」を形成しているからだ。自分の職能の範囲だけで改善しようと思っても、仕事は自分の職能の範囲では完結せず、「他の職能のやり方がこうだからベストプラクティスは採用できない」となってしまいがちだ。こういう「変えるのが大変」という状況をぼくは「チームの慣性力が働きすぎている状態」と呼んでいる。

では、この慣性力に負けないためにはどうすればいいのだろうか。ぼくは心構えとしては以下のようなことを考えている。

  • 文化や仕組みを変えるのは大仕事なので時間がかかってあたりまえなので焦らない
  • 小さい身近なところからやろうとしつつ、小さいことをやりきろうとしない。むしろ小さいところから始めることで学習するくらいに思う。
    • 小さい身近なところから変えていこう、という話はよくされるし、実際小さいところから始めることは有益だと思う
    • 一方、「小さいところ」に見えても結局のところ他の「小さいところ」と有機的に結びついていて、その小さいところを変えるために依存関係すべてを変えなければならないということが普通に起こる。これはソフトウェアの変更と似ていますね。「たった一行」を変えるために他のあらゆる関係する箇所を変える必要が出てきたりするってやつ。
    • もし小さいところが簡単に変えられたら、万々歳ではある。万々歳ではあるが、逆に言うとあまり本質的なところではない
    • 「小さいところ」から変えてみようとしたときにどこがブロッカーになっているかを学習することで、今の自分たちの仕事のフローがどこがどことどうつながっているのかを「仕事の中で」見つけることができる。この「仕事の中で」ってのが大事で、大上段からの「業務フロー分析」はなかなか進めるのが難しいが、仕事の中に組み込まれることでチームの学習が進みやすくなる。
  • 見つけた「変化に対するブロッカー」は敵ではなくて、「同じことに困っている仲間」のはずなので、問題意識の共有からtobeの認識を共有するまでコミュニケーションして同じゴールに向かえるようにする。これに成功しても、次なるブロッカーが生まれるのが常なので、これを繰り返す。ここで大事なのが最初に書いた「焦らない」で、焦ると無力感に押しつぶされる。

とはいえ、常にこのように改善が進められていれば「心構え」などいらないわけで、逆に言えばこれらがいつもできているわけではない、むしろ気持ちとしては常に負けっぱなしである、とも言える。そんなわけで、これは「負けそうな状態を生き抜くため」に自分に言い聞かせている内容、というほうが近いかもしれない。というかふつうによく心折れてしばらくものごとを進められなくなってる(そして回復してからまた取り組みはじめる)。