フジゲン製テレキャスモデルにトーンカットスイッチをつけた

フジゲン製のテレキャスモデルを持っていて、メインギターというわけではないけど、メインの次くらいに編曲仕事で使っている。このギターはアッシュボディにメイプル指板、見た目もブラックガードを意識したスペックになっている。現代のテレキャスというと「ギャリン!」という音のイメージが強いが、よく「古いテレキャスは音が太い」なんて言われたりもする。このテレキャスは多分その「太い音がするテレキャス」を意識して作られていて、かなり低域もしっかりと鳴ってくれるし「ギャリン」というよりも「ズドパリン」としたサウンドになっていて、古いソウルを好む私にとってはベストマッチなテレキャスで気に入っている。

一方、編曲仕事ではいわゆる「邦ロックサウンド」が求められることもあり、AC30系のアンプで「ギャリーン」と金属的で攻撃的な音を鳴らす必要に迫られることもある。また、わたし自身たまにそういう音が欲しくなることもある。いままでは録音後にEQで3khzくらいをブースト、400中心にそっから下くらいのローミッドを適度にカットしてやることでなんとかそういう感じの音を作ってきたのだけれど、アンプをマイキングするようになってからはとくに、EQのブーストによってリアルな空気感が損なわれることが気になってきた(ローをカットするのはあんまり影響ないんだよな)。

じゃあ現代的なテレキャスを一本買いますかね、つってテレキャスをポンと一本買えるなら苦労はしないし、最近エフェクター自作に入門した結果回路をいじることに対してもハードルが下がってきていることもあり、「トーン回路のバイパスしてみますか」という感じで、トーンポットをプッシュプルに交換、プル時にはトーン回路をバイパスするように改造してみた。

エレキギターのトーンは、可変抵抗とコンデンサを使ってローパスフィルタを形成し、抵抗値の変化によってグラウンドに捨てられる高域の量を調整するような回路になっている。このとき、トーンポットをフルテンにしていても、微量の電流はコンデンサ側に流れて、微量のハイカットが行われている。これはべつに不具合ではなくて、それ含めてサウンドデザインとなっていて、シングルコイルはジャキジャキしすぎるからちょっとハイがたくさんカットされる容量をつけといて、「トーン10でも耳にいたくないサウンドにしよう」みたいなことが考えられていいる。

で、このトーン回路をバイパスしてやると、「トーン10よりもさらに明るい音」が得られるわけだ。一番簡単な改造は、常にトーン回路をバイパスするように配線しなおすことだ(多くの場合コンデンサの足をぱちっぱちっとカットしてやればいいが、たまにそれだけだと音がでなくなっちゃう配線になってるものもあるので要注意。ちゃんと自分のギターの配線確かめてからやろう)。とはいえ、ぼくはトーン回路通ったサウンドも気に入っていて、トーン回路通ったサウンドもトーンカットも両方ほしいわけで、この方式は使えない。そこでトーンポットをプッシュプルスイッチ付きのポットに変更して、プッシュ状態のときはトーン回路を通るように、プル状態のときはバイパスするようにと配線をしなおした。ついでにコンデンサもいわゆるオレンジドロップに変更してみた。

正直コンデンサの違いはおまじないレベルだと思う。容量が変わればそりゃ音は明らかにかわるんだけど、容量同じでコンデンサの種類変えてみたところでそこまで音に違いは……。まあこれはわたしの耳が悪いだけかもしれない。一方、トーンカットには明らかに違いが出る。回路が変わってるんだからあたりまえなんだけど。少なくとも狙った方向性の違いはしっかり出ている。

EQを挿して、トーンカットなしのフルテンのとトーンカットありをくらべてみると、以下のようになっており、狙った周波数がきちんと出てきてくれていることがわかる。トーンカットなしのフルテンでは2kHzあたりではすでに減衰が始まっているが、トーンカットしたほうは3kHzくらいまでは減衰が始まらない。

トーンカットなしのトーンフルテン。2kHzあたりではすでに減衰が始まっている
トーンカットなしのトーンフルテン。2kHzあたりではすでに減衰が始まっている

トーンカット。3kHzあたりまで減衰が始まらない
トーンカット。3kHzあたりまで減衰が始まらない

こうして、トーンカットを切り替えることで「ギャリン」も「ズドパリン」も手に入るようになった。ポットとコンデンサ合わせても2000円かかっておらず、お得だったのではないでしょうか。

最強のギター宅録環境 ver. 2023 1月

編曲やレコーディングを真剣にやり始めて、他人様に提供するようになってから随分と経つ。その中で、自分にとってはエレキギターの録音が最も難しい課題のひとつとしてずっと立ちはだかっていた。もうずっといろんな手段を試してみたけど、最近ようやく満足に片足突っ込んだ音を録ることができるようになってきたので、それについて書く。なお、スタンスとして「高い機材買いまくればそりゃいい音で取れるけど、そうじゃなくて創意工夫で現実的な範囲で最高の音を録りたいんじゃ」というスタンスです。

最初に結論

  • 及第点出すならstrymon IRIDIUM買っとけば間違いない
  • マイク録りするなら覚悟が必要。そこは底無し沼だ、気をつけろ。自宅でやるなら以下の戦略を取ろう
    • 音量が小さくてもいい音が出せるセッティングを突き詰める
    • マイキングがかんたんなセッティングを突き詰める
  • 「手軽に安価でシミュレーターよりいい音」を出せるリグは以下の通り
    • アンプヘッド:MV50-CL
    • キャビネット:クローズドバックの1x12inch
    • お好きな歪みやプリアンプペダル:おすすめはValvenergyシリーズ
    • マイク:beta57a

strymon IRIDIUM買っておけば間違いない

strymon IRIDIUM(サウンドハウス)

これ。とにかくこれ買えば間違いない。買う、挿す、録るで及第点の音が出るバケモン。

VSTプラグインのいいところだめなところ

VSTプラグインとして機能するアンプシュミレーターにもいいものが結構あるのだけれど、それでもやっぱりクリーン〜クランチはどうしてものっぺりとしがちだと思う。あと、どうしてもピッキングに対してちょっと反応が悪いな、というものが多いですよね。そういうシミュレータは「ピッキングが悪くてもそれなりの音が出る」という意味では良いんだけど、じゃあ最後にミックスしてみたときに、どうしても存在感が薄くなりがち。シンセサウンドの楽曲にギターを足したいみたいなときはむしろその「のっぺりさ」が良かったりするし、集中して音源作ってるときは「意外といいじゃん」って思ったりもするんだけど、いざプロの音源を聞いたあと俯瞰の耳で自分の音を聞くと「あれ〜〜〜??? プロの音は"そこでアンプがちゃんとなってる立体感、空気感"があるのに、自分の音はなんか立体感がぜんぜんない!」となりがち。セッティングを突き詰めるとVSTプラギンでも立体感が出たりするのかもしれないが、正直セッティング詰めるの難しすぎる。

IRIDIUMが問題を解決してくれる

VSTプラギン系は「ニュアンスの出にくさ、立体感」に課題があった。

で、いろいろ研究した結果、ニュアンスのでやすさについては「アンプシミュレーションの部分の質」が支配的であり、"そこでアンプがちゃんとなってる感じの立体感、空気感"を作るのに支配的な要素はどうやらキャビシミュ、あるいはIR(インパルスレスポンス)なのだ、ということがわかってきた。つまり、アンプシミュレーション部分で演奏のニュアンスをしっかり出して、IR部分で立体感を出そう、という話になる。

Kemperの良いrigなどについては、この「アンプシミュレーションの部分」が頭抜けている印象で、正直そこに関してはIRIDIUMではかなわないかな、と思う。しかし、IRIDIUMについてはIRの部分がマジでよくできすぎていて、「あんまり設定突き詰めずにパッとさしてシュッと録る」だけでリアルアンプの音が耳元でする。すごい。しかもIRIDIUMのアンシミュ部分がダメなのかっていうと全然ダメじゃなくてこれもう好みのレベルでしょ、っていうくらい良い。

で、そうなると「じゃあべつにIRIDIUMじゃなくてよくて、いいIRデータ買って任意のローダーにつっこめばいいじゃん」という話になりそうなもんだけど、そうでもない。というのは、同じIRデータでも、IRローダーによって全然音が異なる。IRIDIUMはIRローダーとしてもめちゃめちゃ質が高くて、正直いって化け物じみている。また、roomノブで「空気感をどれだけ含めるか」というのが調整できて、「空気感、立体感」のリアルさで言うとIRIDIUMがまじで最強。

わたしは趣味としてさまざまなひとが録音したものを聴き比べていて、Kemperで録音されたもの、strymonで録音されたものをそれぞれいろいろ聞いたが、「デフォルト状態で、挿して録ったらもう"ちゃんとアンプがなってる音がする"」という点においてはKemperを大きく突き放してIRIDIUMが優れていると感じた。そして、実際に自分で使ってみても、「いままでVSTプラギンですごく一生懸命音作りしてたのなんだったんだ」って思うくらいにリアルなアンプサウンドが録れるし、お値段もKemperと比べたら全然お安いので(まあKemperほどの機能がないので、単純に比べるものではないのはそれはそう)、とりあえずギター宅録で及第点出すならIRIDIUM使っておけば間違いない。

IRIDIUMで満足できない場合はマイク録りに……しかしマイク録りには覚悟が必要

じゃあIRIDIUMでいいじゃん、となりそうなんだけれど、実はIRIDIUMにも苦手なところはある。それが「どクリーンの音色」だと思っていて、ちょっとサチュレーションがかかってきたり、クリーンよりのクランチくらいだと気にならなかった「ラインっぽさ」が、どクリーンだとまだ、少しだけ残っているのだ。ギター単体で聴くとそうでもないんだけど、オケに混ぜていくにつれて「あれ? プロの音と立体感、リアル感が違う」となっていく。そこでようやく「ついに……マイク録りか?」という話になる。結局IRは「スピーカーが空気を震わせてそれをマイクがひろったときにどうなるか」をシミュレーションしているわけで、それが追いつかない以上、「本当にスピーカーで空気を震わせてマイクで拾うしかない」という話になる。

しかし、マイク録りにはさまざまな問題がつきまとう。

  • リアルアンプが必要(高い……)
  • リアルキャビネットも必要(高い……)
  • 騒音問題(でかい音でアンプ鳴らさないといい音でないんでしょ?)
  • マイキングむずかしい問題(なんかアンビエントとか……オンマイクとかオフマイクとか……位相とか……オフアクシスとか……)

とくに問題になるのは騒音問題で、「外に出る音は小さい音で」というのは最優先というか「前提事項」となるはずだ。そうなってくると、その前提をもとにどうやっていい音で録るか、ということを考えることになる。

小さい音でいい音の鳴るアンプヘッドを使う

当然のことながら、家で twin reverb みたいなくそでか出力アンプをそのまま鳴らすわけにはいかない。そのまま鳴らせる環境があるひとはそれもうプライベートスタジオがあるようなもんで、ちまちま宅録用システム組むのなんかやめてとっとと最高の環境で録れという話になる。一方、じゃあ小さい音の出るアンプ、となると、だいたいがトランジスタのわけわからんカッチカチの音が出るような練習アンプがほとんどである。そうなってくると、実際の選択肢は実はそんなに多くない。

チューブアンプならば、5Wとか、せめて7Wくらいの出力のフルチューブアンプが限界だろう。たぶん7Wでもかなり住環境を選ぶと思う。5Wくらいの出力のアンプ、さいきんはそれなりに存在していて、blackstarとかLaneyのアンプは結構良さそうだった。音が好きならそれらを選ぶのもありだと思う。あるいは、自分の好きなアンプを買って、アッテネーターを利用して出力を下げるという方法もある。ただどちらにしても、コストがそれなりにかかってきてしまう問題はある。後述するが、自宅録音にオープンバックのキャビはハードルが高いので、オープンバックになってることが多いコンボアンプではなくてヘッド+クローズドバックのキャビ、というセットがおすすめになるが、そうなってくるとだいぶお金が……。まあライブでもリハでも使える、ということを考えたら安い、と思うこともできなくはなさそうではある。アッテネーターについてはUniversal AudioのOXがデファクトスタンダードとなっているが、まあ高いですよね……。また、歪みをアンプで作る場合、「そのアンプのキャラクターの歪みしか録音できない」という問題は起こる。べつのタイプの歪みを録音するためにまたヘッドを買って……ということができるのであればよいが……。好きなアンプヘッドとOX買えるなら素直に買っとけばそこでゴールだと思うのでそれでいいです。ぼくは無理です。

ではモデリング系のデジタルアンプはどうか。正直あまりおすすめしない。実は小規模なライブで使うには一台でいろんな音だせて便利だったりするんだけど、レコーディングのような「繊細なタッチまで拾いたい」みたいな用途にはやっぱりあまり向かないと思っている。例外としてFenderのtonemasterシリーズはかなり良さそうであった。まあでも物理的にでかいよねって話はある。この分野は日進月歩なのでそのうち真空管アンプはいらなくなるかもしれない。はやくその日が来て欲しい。

で、じゃあなにがおすすめかというと、Nutube搭載のVOXのMV50-CLと任意のプリアンプペダル(や歪みペダル)の組み合わせだ。MV50シリーズはどのアンプも素晴らしい音がするが、このMV50-CLは、真空管らしいニュアンスやコンプレッション感がしっかりありながらも、bassとtrebleを12時にするとかなりフラットな出音が出てくる。ギターの特性やピッキングニュアンスもかなり素直に出力される。また、MV50シリーズの中で唯一EQがtoneツマミでははくtreble/bassの2バンドとなっている。また、MV50の他のシリーズも歪みのキャラクターはかなりいいんだけど、どうしても「プリアンプ感」があって、「パワー管が真空管で駆動されている感じ」がしない。CLはMV50シリーズの中で一番パワー管まで真空管のアンプっぽい音が出てくる(実際はパワーアンプ真空管じゃないんだけど)。その特徴を活かして、これを「音量を落としてもいい音がちゃんと出る真空管パワーアンプ」として扱う。

MV50シリーズにはsend/returnがついていないことがよく弱点として挙げられるが、MV50-CLを真空管パワーアンプ扱いした上で、前段のプリアンプペダルや歪みペダルで好みのキャラクターをつけると良い。で、そのペダルの後段に空間系ペダルを入れてしまえば、「プリアンプでキャラ付け => send => 空間系 => return => パワーアンプで増幅」といういつもの考え方で音作りができる。本物の真空管アンプの歪みがほしいならNutube搭載のペダルを使えばかなりいいところまで行く。しかも、別のキャラクターの歪みや別のキャラクターのクリーンサウンドが欲しくなったら、ペダルだけ買い足せば良い。宅録環境としてはかなりおすすめできる考え方だ。valvenergy全シリーズ欲しい。

キャビネットにはクローズドバックの12インチ一発を使う。マイクは一本。多くてもオンマイク2本。

で、ようやくキャビとマイクの話。自宅録音で、アンビエントを録るのはおすすめしない。だって自室はいいアンビエントがあるスタジオじゃないんだから。そもそもアンビエントの環境がよくないのにいいアンビエント録るのは不可能。プラグインで高品質なリバーブをあとからかけて、アンビエントの代わりとしましょう。というわけで、宅録では立てるマイクはオンマイクだけがよい。で、そもそもマイク1本で拾えるのはスピーカーひとつだし、スピーカーは一発でよい。でかいし。

じゃあ何インチのスピーカーにすべきかっていうと、やはり12インチが置けるなら12インチを使うべきだろう。8インチのスピーカーも使ってみたことがあるが、ローは工夫次第でいい感じにできるんだけど、小さいスピーカーだとどうしても歪ませたときに音がへんにシャリシャリしてしまう。具体的に言うと8khzあたりが変なふうに再生される感じがする。それを狙っているのでない限り、ちょっとおすすめできない。EQであとから8khzあたり削ると少しマシになるので、どうしても部屋に8インチくらいまでしかおけない、というひとはそういう手段でトリートメントしてもいいかもしれない。しかしそういう場合は素直にIRIDIUM使った方が幸せになりそう。

そして、重要なポイントとして、オンマイクで録ることを前提に考えるのであれば、キャビはクローズドバックにするべきだと思う。オープンバックのキャビネットは、エアーで聴いているとすごくいい音なんだけど、それはフロントから出ている音とバックから出ている音がエアーでミックスされていい音に聞こえているわけで、この「耳に聞こえているいい音」をオンマイクのみで集音するのは不可能だと思った方がよい。「部屋鳴りは録らない。オンマイクのみ」の方針でいくなら、ぜったいにクローズドバックがおすすめである。実際ぼくは1ヶ月くらいずっとオープンバックのキャビで録音しては「どうしても耳で聴いているような音で集音できない」と悩んでいたが、このことに気づいてクローズドバックに変えたら「耳で聞いてる音にかぎりなく近い音」が簡単に集音できて拍子抜けした。

多分この自宅録音システムで一番金がかかるポイントがキャビだと思う。が、自作できるならばそうすると安く上がるという話はある。ぼくは友人が作ってくれた自作キャビを使っている。このキャビはオープンバックだったので、寸法を測ってホームセンターで木材を買って自分でクローズドバック化した。音をDIYしていけ。

マイクは何を使えばいい? どうセッティングすればいい?

定番はSM57で、実際いい音だと思う。ただ、これはわたしの趣味の話なんだけど、ちょっと高域がキツく、低域の解像度が低く感じてしまう。SM57を使うのであれば、もう一本コンデンサマイクなどを同時にたててミックスしてやりたくなる。一本のマイクで集音することを考えるなら、わたしのおすすめはbeta 57Aを使うことで、SM57のいいところを残しつつ、高域は少し滑らかに、低域も(コンデンサマイクほどではないが)解像度高く録音することができる。しかもお値段もお安い。推しです。SM7Bも結構良さそうだとおもった。ただ、どのマイクを使うかっていうのはこれはもう好みの問題で、普通にプロの現場で使われているようなマイクならなんでも好きなものを使うと良いと思う。Youtubeとかで比較動画とか結構上がっているのでそれを見て研究するのも楽しい。

マイクのセッティングについてはいろんなことを言う人がいるけど、ぼくがめちゃめちゃ参考にしたのはこの動画シリーズ。

www.youtube.com

ノイマンホームスタジオアカデミーはめちゃめちゃ勉強になるのでおすすめです。いろいろ実験してうまくなるしかない。

まとめと結論

  • 2023年1月時点でわたしが暫定的に出した「IRIDIUMで満足できない体になってしまったひと向けのコスパ最強の自宅ギター録音環境」について書いた
  • MV50-CLを真空管パワーアンプ扱いして、前段で好きなキャラクターをペダルで作ってその間をsend/return扱いする
    • これで「小音量でも真空管のいい音」が手に入る
  • キャビは12インチ1発、クローズドバックにする
    • これで自宅でもいい音でマイキングすることができる
  • マイクは好きなやつでいいと思う。マイキングは練習あるのみ。

strymon IRIDIUM使おう!!!!!!!! それで満足できるのが一番幸せ!!!! 沼に近づいてはいけない!!!!!

これ以上の音が欲しいならもう宅録はやめてスタジオ録音ですね。のお気持ちです。

ライブの際にBPMを視覚的に教えてくれる便利なやつ作った

自分のバンドで使いたいから作った。

ニーズ

  • ライブをやるときに、セットリストが足元にあると便利。
  • BPMも同時にわかると便利
    • 便利なんだけど、ふつうBPM:88ですって言われてもそれがどれくらいの速さなのかはパッとわからない
    • 楽譜アプリとかで、視覚的にBPMがわかる(丸が点滅してくれる)やつもあるんだけど、ライブしてる途中にスマートフォンとかタブレットとかいじってるところあんま見られたくない
    • できればペダルボードの横とかに放置しておくだけで全曲のBPMを視覚的に教えてほしい。

機能

  • ライブでやる曲のリストをformタブから入力できる
  • prompterタブではそのリストが表示され、「signal」というカラムでその曲のbpmに合わせて「●」が点滅してくれる
  • share linkをコピーすると、アプリをインストールせずにバンドメンバーに展開可能
    • その際入力しておいたセットリストとbpmはURLから復元されるので便利
    • ブックマークしておけば設定を保存できるということでもある

問題点

  • share linkやインストール不要などのメリットを取ったせいで、スマホとかが自動スリープすることを防ぐことができない。ライブのときはスマホタブレット自体の設定で自動スリープを防いでほしい。あと電波がないとロードできない(電波があるところでロードしたあとは電波なくても動き続けるから実用上そんなに問題にならないはず)。

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BpmPrompter

黒鍵の「この音」、なんと呼ぶ問題

先日、絶対音感持ちだけど楽典には弱い(楽典に弱い、というのは本人談。ぼくがその人をみていてもそんなにめちゃめちゃ楽典弱いとも思わない。強いとも思わないけど)の友人が、調がB♭マイナーの楽曲のメロディーの中の、m3に当たる音を指して「ド♯」と言っていて、軽い違和感を持った。一般的にはB♭マイナーの楽曲を考えたら「シ♭-ド-レ♭-ミ♭-ファ-ソ♭-ラ♭-シ♭」というスケールを思い浮かべるので、B♭マイナーの楽曲の中で「レ♭あるいはド♯」で表される音が出てきたらそれは「レ♭」と呼ぶことが多いと思う。とはいえ、べつに「レ♭」でも「ド♯」でも、平均律の世界においてはその音高に1Hzの違いもなく、同じ音を指すので、違和感をもつくらいで、コミュニケーションに齟齬が起こることもないのでそれ自体に問題はないし、それが間違いだとは(ぼくは)思わない。

で、ちょっといろいろ考えていたんだけど、じゃあ自分がもし、とくに調などの文脈なしに、いきなりピアノの前に連れてこられて「ドの半音上、レの半音下に位置するこの黒鍵の音はなに?」と聞かれたら、たぶんその友人と同じく「ド♯」と答えると思う。調というコンテキストがない状態で考えたときに、そこに位置する黒鍵の音名は「レ♭み」よりも「ド♯み」のほうがずっとずっと強い。

じゃあ「♯」を基本に考えているのかというとぜんぜんそんなことはなくて、「レの半音上、ミの半音下の黒鍵」は「レ♯」だとちょっときもちわるくて「ミ♭」が収まりがいい。「ファの半音上でソの半音下」は「ソ♭」というよりは「ファ♯」だし、「ラの半音上でシの半音下」は「ラ♯」よりも「シ♭」が収まりがいい。おもしろいのは「ソの半音上でラの半音下」で、これは「ソ♯」でも「ラ♭」もどちらも同じくらいに収まりが良いと感じる。そしておそらくこれは楽譜を読んで音楽を演奏する多くのひとと共有できる感覚なのではないかと思っている。

これにはカラクリがあって、楽譜を読んで音楽を演奏する際、ぼくたちは臨時記号(おたまじゃくしの隣に付く♯や♭)によって半音変化させることよりも、調号(ト音記号とかヘ音記号のよこに書かれる♯や♭)によって半音変化させることのほうがずっと多い。それは考えてみれば当然のことで、もし調号で半音変化させるよりも多く臨時記号で半音変化させるような楽譜があるのであれば、それはそもそも別の調として捉えるべきメロディを間違えて捉えて書いた譜面だとみなせるはずだ。

ここで、「ファ♯とソ♭は同じ音ですが、調号においてはどっちの読み方が頻出ですか」ということを考えてみる。ちょっと考えればわかるんだけど、ファ♯が調性記号に初めて出てくるのは、キーCから♯がひとつ増えるキーGで、そのあとD, A, E, Bと順に♯が増えていっても常にファ♯は出現する。一方ソ♭がいつ調性記号に出現するかというと、キーCから♭がひとつ増えるF,そこから順にひとつずつ♭がふえるB♭、E♭、A♭ まで出現せず、D♭きて初めて出現することになる。

最初の「ドの半音上、レの半音下」の話に戻ると、ここでも同じことが言えて、調号として普通に楽譜を読んでいて「ド#」が出てくる頻度と「レ♭」が出てくる頻度だったら、「ド♯」が出てくる頻度ほうが圧倒的に高い。だから、楽譜を読んで音楽を演奏する多くのひとにとって、調のコンテキストなしで見た時「ドの半音上、レの半音下に位置するこの黒鍵の音」は「ド♯」みがつよい、ということになるのだと思う。

ここで面白いのは、冒頭の「絶対音感はあるが楽典には弱い」友人とぼくの違いだ。ぼくは絶対音感がなく、ちょっとだけある相対音感と楽典で音楽を理解しがちなので、「この曲はキーB♭m」という意識が強く出た上で、「キーB♭mにおけるm3の音だからレ♭(つまり調号で考えている)」と感じる一方、絶対音感がある一方普段そんなに楽典を意識していないひとは調の前に「ドの半音上、レの半音下の"この音"」の意識が強いから、調のコンテキスト抜きにパッと「ド♯」という音名が出てくるのではないか。

今日思いついたことは以上です。まじでなんの役にも立たない雑文だなこれ

追記:

スケジュールとスコープはトレードオフだが、ではユーザーストーリーは?

よく、プロジェクトマネジメントにおいて、「品質、コスト、スケジュール、スコープ」はそれぞれトレードオフにあり、すべてを固定することはできないと言われる。ここにt_wadaさんの「質とスピード」の話を合流させると、品質はスケジュールとトレードオフではなくてむしろスケジュールに対する説明変数である、と見ることができる。結果、これは「コスト、スケジュール、スコープ」のトリレンマと理解することができるし、アジャイルな開発においては「スコープを調整していく」ということがよく行われる。

ここでいう「スコープ調整」については以前書いた。

アジャイルなプロジェクトマネジメントにおける「スコープ調整」でやるべきこと、やるべきではないこと - 猫型の蓄音機は 1 分間に 45 回にゃあと鳴く

それに対して以下のようなレスポンンスをいただいた。

いろいろなスコープ調整 - 半空洞男女関係

上記の「スコープとスケジュールはトレードオフ」という話とこれらの話をつなげて考えてみたい。

すると、スコープとスケジュールはトレードオフなのだが、ユーザーストーリーとスケジュールは実はトレードオフではない、と言えるかもしれない。スケジュールを固定したらスコープを動かさなければならない、あるいはその逆も真だが、ユーザーストーリーとスケジュールは両方固定できる。そういう考え方ができそうだ。「機能」は「できた」「できなかった」の二値なのだけれど、ユーザーストーリーは「めちゃめちゃ実現できた」「おおよそ実現できた」「少し実現できた」などのグラデーションがある、という見方はどうだろうか。このような見方をすると、スコープ調整は「当初狙った通りのユーザーストーリー達成の水準は狙えないので、水準は落とさざるを得ないが、どのようにしてなるべく水準を落とさずにリリースを迎えるか、そのためにどうタスクや機能を組み替えるか」を考えることだ、という発想に至れそうな気がする。

どうでしょうね?

重要かつ高コストな「合意」の扱い方

組織やチームにおいて、合意は非常に重要だと思う。そもそもなんらかの合意が存在しないチームや組織はそれはもはや組織やチームではなく、バラバラな個人の集まりとなる。

一方、合意はとても高コストだ。全ての行動に合意が必要となる場合は、動きはとても遅く、目的を達成するためのコストは跳ね上がる。なにをするにしても「根回し」と「合意」をとらなければならなくてとにかく仕事が進まない、というのはよく聞く嘆きではないだろうか。合意は重要だが、一方でハイコストなので、合意を取る必要のないものについては合意なしで済ませることも重要となる。

合意は非常に重要だが、ハイコストである。このジレンマに対しては、「合意を取るべきものはなにか」「何ならば合意を取らずに進めていいのか」の合意、いわば合意に関するメタ合意とでも呼ぶべき合意が重要になると考えることができると思う。メタ合意さえあれば、本当に合意を取るべき(と合意が取れている)ものについてはコストをかけて合意を取ることでチームや組織として動くことができるようになり、一方で合意を取らなくて良い(と合意が取れている)ものについては合意のコストをかけずにクイックに物事を進めることができる。逆にメタ合意がない場合、「空気を読む」「よろしくオシャレにやっていく」というスキルを関わる全員が(全員が!!!)持っている必要が出てくるし、それは現実的ではない。その結果として「どこまで決めていいのかわからない」ということがおこり、クイックに物事を進めることができなくなってしまう。

このメタ合意について、常に「正解」となるようなパターンはおそらく存在しない。というのは、組織のサイズやフェーズによって、適切なメタ合意の位置は異なるはずだからだ。

一方で、「メタ合意パターン」というのはいくつか導くことができそうだ。たとえばKPIツリーと、それに紐づく目標というのは「メタ合意パターン」のひとつとして解釈することができそうだ。組織としてひとつのKPIツリーを設定するということは、とりもなおさず、どのようなKPIを設定し、それらがどうつながっているべきかについて、組織内で取られた合意を形式化することにほかならない。また、それらのKPIに紐づいた目標を設定するということは、ある期間において達成すべき成果についての合意を取ることにほかならない。

たとえばKPIツリーを「メタ合意パターン」として使うことで、「どの指標が重要で、どの指標をどこまで上げるかについては合意を取りました。手段については合意はいりません、好きな手段で指標をあげてください」というメタ合意を取り付けることができる。逆にいうと、KPIツリーを作って指標に対しての目標を設定したにも関わらず、目標達成のための施策についていちいち合意が必要になる場合は、KPIツリーをメタ合意パターンとしてうまく使えていないと見ることも可能そうだ。

余談として、「どのような手段を使うかについて合意はいりませんよ」という場合にも、ガバナンスを効かせることは必要であろうが、ガバナンスを効かせることと全てに対して合意が必要になることはまた別のものだと思うので、ここではガバナンスについてはスコープ外としている。

重ねて言うが、常にどんな組織、チームにもKPIツリーが「メタ合意の正解のあり方」になるとは言っていない。メタ合意のパターンの一例として眺めてみたにすぎない。

こう書いてみると当たり前のことのように思えるが、意外と「メタ合意」がないせいで物事がうまく進まないという組織やチームは多いのではないだろうか。とくに「決められない」「どこまでやっていいのかわからない」「毎回合意を取っていて大変」みたいな感じで物事がうまく進まないときに、自分達はどのようなメタ合意のもとに仕事をしているのか、あるいはそもそもメタ合意が存在するのか? ということを考えてみても良いのかもしれない。

謙虚であるために、謙虚であってもらうために

謙虚と卑屈の違いについて考えていたら、思い当たったことがある。それは、卑屈は目線が自分だけに向いていて、謙虚は目線が他人とのコラボレーションに向いているのではないか、ということだ。

例えば、自分の作った曲が100万再生されたミュージシャンがいたとして、そのミュージシャンが「100万再生すごいですね」と言われた時の反応を例にとってみる。

それに対して、「いや、私なんてすごくないですよ、歌のピッチだって揺れているし、歌詞だって恥ずかしいものだし」と応えるミュージシャンと、「とても嬉しいですが、自分の力なんて微々たるものです。応援してくれたファンの方々がたくさん感想を拡散してくれたことも大きいですし、形にしてくれたレコーディング・エンジニアの方の力も大きいですし」と応えるミュージシャンを考えてみると、前者は卑屈に、後者は謙虚に見えるのではないだろうか。これは、前者はとことん「自分のダメなところ」に目線が向いているのに対して、後者は「達成したことについて、自分がやったことや他人がやったこと」に対して目線が向いているからなのではないかと思う。

仮に、自分の成果にばかり目線が向いているのが卑屈、自他のコラボレーションに目線が向いているのが謙虚である、という考え方が多くの人に受け入れられるとすると、以下のようなことも言えるのではないかと思う。それは、自分が謙虚であるためには他人のやること、やったことに対して敬意と感謝を持つことが重要である、ということと、他人に謙虚を求めるのであれば、そのひとの達成したこと(あるいは達成しようとしていること)に対して、自分や第三者がどのような役割を演じているかを添えて伝えることが重要である、ということだ。

自分が謙虚であるためには他人のやること、やったことに敬意と感謝を持つことが重要と言うのは説明の必要もないように思うけれど、他人に謙虚を求める場合に自分や第三者の役割を伝えるべきというのには少し飛躍があるかもしれないので補足をする。

他人に謙虚を求めるということは、逆に言うと当人の態度が今は謙虚でないように見えている、という前提がある(当たり前だ……)。それはとりも直さず、達成した(あるいは達成しようとしている)成果に関して、他人の貢献が見えていないあるいは認めていないように見えている、ということだ。謙虚でいてもらうためには、他人の貢献を認めてもらう必要がある。しかし、そもそも当人とっては自分一人の認知では他人の貢献が見えていなかったりそれを貢献だと認めていないからこそ、そのような態度になっているのだから、きちんと「こういう貢献があるよね?」と伝えてあげて、他人の貢献を認知してもらう必要があるだろう、という理路で、「謙虚を相手に求める場合には自分や第三者の貢献を同時に伝えた方が良い」ということが言えそう、という話。さらに言えば同時に「あなたの貢献としてこれこれこういう素晴らしいものがある」ということも伝えればより良いだろう。

そうじゃないと「自分の能力を低く評価しろってことか?」「自分の能力をお前は低く評価してんのか?」と受け取られかねないと思うし、そのようなすれ違いはあまりいい結果を産まないと思う。