言うんじゃなくてやる以外に方法がない

「顧客中心主義」という言葉を振りかざすひとは胡散臭く感じてしまうが、一方で重要な考え方であるとも思うアンビバレントがある

労働についての話。

労働をしていると、「どうしてうちの組織はこうなってないんだ」とイライラすることはだれにでもあると思う。というか、そういうイライラを失ってしまったとしたらそれはもう理想を失っているということで、改善の機会を失っている。理想と現実の間のままならなさにイライラしながらも顧客(その顧客は社内の別の部署かもしれないが、それが最終的にエンドユーザーに届くロジックは強固にたてついていないといけない)に対してなんらかの価値を提供して対価を得るのが労働だとさえ思う。

ところで、この理想を実現するためにはどうしたらいいのだろうか。理想を知ること、理想の状態を想像することは簡単だけど、このままならない現実を理想に近づけるためになにかを変えるというのはすごく大変だ。このギャップがひとを苦しめる。「こうあるべき」を言うだけなら誰にでもできることなので、それに価値はほとんどない。結局価値があるのは「一歩でも理想に近づく変化をもたらす行動」だけなんだけど、その変化をもたらす行動をできるかどうかは「どういう仕事をまかされるか」に依存するので、自分の意思だけではできず、そのための仕事を任されるしかない。そして仕事は「その仕事ができるであろうひと」に任される。だってそうしないと事業が止まるもん。と、ここで気づく。「任せられるひとに仕事を任せる」ってそれループしとるやんけ。

このループを断ち切って、「任される」に入るためには、結局のところ、「だれかがやるだろう」じゃなくて「自分の仕事じゃないけどそれをやることで事業のためになるから、やって結果を出す」という行動を続けるしかない。つまり、理想状態を作るためには、「今チームの目の前にある、事業上求められていること」に対して、いままで通りのやり方で結果を出すのではなくて、いままでを超えるやり方を探索しながら結果を出すしかない。いままで通りのやり方でやっても結果は出るかもしれないけれど、それはいままで通りなのだから変化にはならない。変化させるだけで事業上の結果を出さないのであれば、それは「無駄な変化」であり単なる迷惑行為である。だけど、やり方を変化させながら事業上の結果を出せば、「仕事の報酬は仕事」という感じでさらに仕事が任され、「変えることのできる範囲」が広くなっていく。

そう考えると、理想の状態を作っていくためには、「理想の状態を作るための仕事」をするのではなくて、「理想の状態に一歩だけ近づくようなやり方で、事業上の結果を出す」ということを繰り返していくしかないのだと思う。「理想の状態を作るための仕事」は「仕事のための仕事」で顧客のための仕事ではないから、どう頑張っても優先順位が下がっていく。労働だからしょうがないよね、労働は顧客に価値を提供しないといけないんだもん。「なんで理想の状態になってないんだよ」って愚痴を言うのはだれでもやる(ぼくもやってしまう)けれど、愚痴るだけではなくて、仕事を引き受けて、引き受けた以上のやり方をして実際に良い結果を出す。これは正直言ってかなり難しいことだと思う。ぼくも常にできているかって言ったらそんなことなくて多分三年に一回くらいしかそういうことができていない。けれど、結局言うんじゃなくてやる、以外に方法がないのだ、ということを理解したのでこれからもやるしかないのだと思う。しかししんどいわね。本当は寝て過ごしたい