12月なので今年の音楽活動(ソロ音源制作)を振り返る

ぼくは普段自分自身をプログラマやソフトウェア・エンジニアではなく「自称ミュージシャン」(音楽で食えていないので「自称」が取れない)と呼称している(労働という文脈の上ではしょうがなく「ソフトウェア・エンジニア」やプログラマを名乗っているけども)。今年は結構な数の音源をsoundcloudにアップしたんだけど、そんなわけで今年のソロ音楽活動の中で音源制作について振り返りたい。

今年は作った/関わった音源は全部で13曲。そのうち新作が2曲。新曲のうち1曲はインストなので歌物の新作は1曲だけという結果だった。今年結構いろいろ作った気になってたけど、ほとんどがリメイクだったり再録だったりひとの曲のアレンジだったりしていたみたい。習作が2作あって、これは歌詞をつければ歌物として成立する感じなので、やっぱり作詞とボーカルがネックになっていると感じる。

そんな感じで新作が少ないから、というわけでもないけど(いや、だからかもしれない)、今年は作詞、作曲、演奏についてはあまり成長のない一年だった気がする。一緒にやってるバンドメンバーの作詞・作曲能力が非常に高いので、負けないように来年は作家性の面でももう少し真剣にやっていきたい。

一方で、編曲とDTMは今年でだいぶ成長できたように思う。とくにパーカッションの扱いについてはゼロがイチになったというか、一切ノウハウのない状態だったのが、今年ようやく自分の使える語彙の中にパーカッション類が入ってきたのが大きな成長だと思う。自分があまり上手に弾けないから苦手意識のある鍵盤のアレンジについても、だいぶ語彙が増えてきたかなという感じがする。しかしこれはまだまだ課題を感じているので、来年も引き続きいろんな工夫をしてレベルアップしていきたい。ドラムの打ち込みとベース、ギターのアレンジは壁を感じている。去年からあまり変わってないように感じる。ドラムの打ち込みについてはだいぶ壁があるというか、これ以上はどうやってうまくなればいいのか見えてないような感じ。ギターとベースのアレンジは演奏の語彙に依存する部分が大きいので、来年はコピーとかやって演奏の語彙を増やしたほうがいいかもしれない。ミックスダウン、マスタリングに関しても、やっぱり最近の曲になればなるほどまともになっていっている。やっぱりこれも数こなすしかないのかな。ミックスダウン・マスタリング教えてくれるひとがほしい……。

演奏面についてはギター、ベースともに「理想の演奏」にまだ近づいてないというか、自分が弾きたいフレーズに追いついていないのでこればかりは単純に練習するしかなさそう。ボーカルについてはなかなか練習する機会がないのでどうしたもんか、という感じ。歌練習部とか作りたい。歌録りについては「下手を前提に」録る方法が少し成長した。

以下一曲ずつふりかえりです。

38度7分

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昔、数値海岸というバンド(バンド名は飛浩隆「グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ」 に出てくるリゾート世界「数値海岸コスタ・デル・ヌメロ」が元ネタ)をやっていて、そのバンドでやった曲を再録。アレンジは数値海岸でやっていたときのものを踏襲して少しだけ手直ししたという程度。高熱で朦朧としているときの感じがうまく表現できたのが気に入っている。あとビートルズのGirlをアレンジ上引用してるのもハマってて気に入ってる。いまやってるバンドのメンバーのタダくんに「よくできてる」と言ってもらえたのが嬉しかった記憶がある。ボーカルはひどい。

コーヒー・アンド・シガレッツ

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これは新作。タイトルはジム・ジャームッシュ監督の同名の白黒映画から拝借。雰囲気から着想を得て、タイトル->メロディとアレンジが同時進行->作詞という順番で作った曲。というかリアレンジのとき以外、だいたいの場合この順序で曲を作っている気がする。アレンジについてはもう少し凝ってもよかったのではないか(とくにドラムとピアノがまだまだ練れていないし、アウトロももうちょっとやりようがあっただろうと思う)という気持ちだが、そういう気持ちが「(demo)」という表記に表れている気がする。これもボーカルはひどい。音楽仲間の友人何人かから「好き」と言ってもらえて嬉しかったので、いつかもっときちんとやって再録したい。

ブラックサンダー

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tmrrさんという音楽友達の曲をアレンジして演奏して打ち込みして録音したやつ。男声ボーカルはぼくで、女声ボーカルはtmrrさん。アレンジ面で言えばこの一年で一番よくできたのはこの曲だと思う。アレンジャーとしては良い思い出 of the yearという感じ。曲自体の良さに引っ張られてこのアレンジが出てきたので、tmrrさんさまさまという感じである。男声ボーカルはひどい。女声ボーカルは録音慣れしてない上iPhone録音とは思えない出来だと思う。

sketch_2018_01_24

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習作。ストリングスとホーンでキラキラしたポップスを作る練習をしたやつ。出来上がった瞬間は「なんかダサいJ-POPみたいになっちゃったかなあ」って思ったけど、今聴くとちゃんと狙ったところに落ちてる気がする。サビの感じはLIFEのころの小沢みたいじゃんって思ってちょっと自分で自分の曲を見直した。

Choonie

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tmrrさんの曲第二弾。アレンジして演奏して打ち込みして録音したやつ。ブラックサンダー!は曲をいただいた瞬間にアレンジが思い浮かんでそのままシュッとDAWに向かって出力した感じだったんだけど、これは結構試行錯誤した記憶がある。おかげでちょっと自分のアレンジの幅が広がったかなという感じがする。これまたおかげさまである。ひとの曲をアレンジするときには、歌詞や曲の世界観をサポートするようなアレンジを心がけているんだけど、試行錯誤したとはいえ最終的にはきちんと歌詞と曲から感じるアンビバレントな感じを表現できたのではないかと思っている。才能のあるひとの作る曲のアレンジを任せてもらえるのは楽しい。アレンジャーとしての良い思い出その2と言えそう。

バターと黒胡椒

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新作。インスト。「演奏ができるバカがやるセッション」みたいなコンセプトで作った曲。セッションといいつつ全パート打ち込みなんですが。習作も含めた今年の新作の中では一番の出来なんじゃないかなと思う。「ラテンジャズとかジャズファンクとかの雰囲気に挑戦してるロックバンド」みたいな感じですね。ベースソロの後ろでパーカッション隊がバカみたいに騒いでるのが「演奏ができるバカがやるセッション」を体現していて気に入っている。「うるせえ!!ベースソロやってんだろうが!!!」みたいな。この曲作ったおかげでパーカッション隊の扱いにおいて一皮むけたという実感があります。

アンドロイドの恋

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昔妻と一緒にやっていた「kkum」というバンドでやろうとしてできなかった曲のリメイク。再録ではなくリメイクなのは、アレンジが当時とガラッと変わっていて、歌詞も多少手直ししているから。コード進行とメロディは当時を踏襲している。ベースラインの元ネタはダニー・ハサウェイの「ゲットー」。ギターはスティーブ・クロッパーを、ドラムはアル・ジャクソンを意識した演奏、打ち込みになっている。ドラムソロとピアノソロがお気に入り。結構あの時期のソウルっぽい雰囲気をうまく現代風に持ってこれたのではないかと思っている。バターと黒胡椒で得たパーカッション・ノウハウも生きていて、自分でもこのアレンジは気に入っている。ボーカルはもう少しなんとかならんかったんかな、って気がする。いつかボーカルだけ再録したい気がする

季節

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たぶん自分の結婚パーティで妻と一緒にやったのが初演。もう7年前とかですね。今から考えるとなんでこんな後ろ向きの歌を結婚パーティでやってんだw。ソロで弾き語りするときの定番レパートリー。自分で歌ってる音源が存在してないので、これ(どれ?)を機に録音したもの。いまのバンドでもやったことあるけど、アコギとベースだけのこれくらいシンプルな構成(けどアレンジはそれなりに凝ってる)のほうが曲に合う気がする。この曲は歌い慣れているのもあってそれなりに聞けるボーカルになっていると思う。

花粉症ビバップ

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再録。リメイクですらない。前録音したときにまじで花粉症ど真ん中で、鼻声がすぎたので録音しなおしてmixのバランスをちょっと直したもの。あ、ドラムも打ち込みしなおしてるかも。撮り直してこのボーカルかよ……という感じがするんだけど、この曲難しくて歌えないんだよ……。曲自体は気に入っているんだけど、自分では歌えないのまじでなんとかしてほしい。だれがなんとかしてくれるっていうんだ……。だれか歌ってくれるひといるなら歌ってほしいまじで。歌唱のスキルが低くて作曲、編曲のスキルに追いついていないためこういうことがおこるのである。

ゆう[優・融]

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こだわりのタイトル。これは19才とかそれくらいのときに作った曲の再録。アレンジはほぼ当時のものを踏襲している。コーラスとシンセサイザーのぴこぴこだけは当時のアレンジにはなく、近年足したもの。ベースラインは当時からけっこう考えてたことがわかるけど、全体的にシンプルで、「まだ難しいことできません」って感じがする。この曲は「曲と歌詞が同時進行 -> タイトル -> アレンジ」という順序で作られていて、自分としてはめずらしいパターン。だからなのか、アレンジの力じゃなくて歌詞とメロディで勝負するぞ!って感じになってて、今聴くと気恥ずかしいところもあるんだけど、なんども再録してたりしてなんだかんだ気に入っている曲であることがわかる(他人事かのように)。ギターソロは当時のままだけど、なかなかいいソロやんけ。

sketch_2018_10_07

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ベースラインの語彙を増やそうと思って作った習作。まじで習作という感じなのでとくにいうことない。ベースラインの語彙は増えた。

Q

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数値海岸でやってた曲のリメイク。歌詞とアレンジがかなりドラスティックに直されている。それどころかタイトルすら変えられてしまっている。数値海岸でやってるときから「マッドチェスターっぽくしたい」って思ってたんだけど、このリメイクでようやくそのイメージが形になったかなと思っている。普段はあんまりこういう歪んだギターを弾かないので、久しぶりに「ロックギター!」って感じのことができて楽しかった(しかしソロのスケールなどはちょっとロックギターっていうにはひねくれてますね)。こうしてみると、自分の音楽的語彙は大きくフリッパーズ・ギターに依存しているのだなあと思う。フリッパーズ・ギターを通じて知った音楽を掘っていったという自分の音楽の聞き方上、あたりまえなのだけれど……。ボーカルについては、自分のボーカルが下手なことを受け入れた上で、その下手な歌を素材としてどう聴かせるかみたいな部分で少し成長がみて取れる。

これからむかえにいくよ(スガシカオcover)

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鬱屈した攻撃性とでもいうべきものが、ベースとギターでだいぶうまく表現できたカバーになっているのではないかと自画自賛している。ベースとギターは派手だけど、派手なところだけじゃなくて、Bメロに入っているウィンドチャイムとか1オクターブ下でユニゾンしてるボーカルとか、サビでなってるシェイカーとか、Aメロの一部に実は入ってるカウベルとか、そういう「ちゃんと聴かないと聴こえないけど、あるとないとでは雰囲気に違いが生まれる」みたいな細かい部分をきちんと作り込んでて、「去年だったらこういうことはできなかったよな、今年もDTMとアレンジちゃんとうまくなったな、成長してるな」と1年を振り返って思える出来になったのでよかった。一曲一曲ちゃんと成長してるんやで!!