重要かつ高コストな「合意」の扱い方

組織やチームにおいて、合意は非常に重要だと思う。そもそもなんらかの合意が存在しないチームや組織はそれはもはや組織やチームではなく、バラバラな個人の集まりとなる。

一方、合意はとても高コストだ。全ての行動に合意が必要となる場合は、動きはとても遅く、目的を達成するためのコストは跳ね上がる。なにをするにしても「根回し」と「合意」をとらなければならなくてとにかく仕事が進まない、というのはよく聞く嘆きではないだろうか。合意は重要だが、一方でハイコストなので、合意を取る必要のないものについては合意なしで済ませることも重要となる。

合意は非常に重要だが、ハイコストである。このジレンマに対しては、「合意を取るべきものはなにか」「何ならば合意を取らずに進めていいのか」の合意、いわば合意に関するメタ合意とでも呼ぶべき合意が重要になると考えることができると思う。メタ合意さえあれば、本当に合意を取るべき(と合意が取れている)ものについてはコストをかけて合意を取ることでチームや組織として動くことができるようになり、一方で合意を取らなくて良い(と合意が取れている)ものについては合意のコストをかけずにクイックに物事を進めることができる。逆にメタ合意がない場合、「空気を読む」「よろしくオシャレにやっていく」というスキルを関わる全員が(全員が!!!)持っている必要が出てくるし、それは現実的ではない。その結果として「どこまで決めていいのかわからない」ということがおこり、クイックに物事を進めることができなくなってしまう。

このメタ合意について、常に「正解」となるようなパターンはおそらく存在しない。というのは、組織のサイズやフェーズによって、適切なメタ合意の位置は異なるはずだからだ。

一方で、「メタ合意パターン」というのはいくつか導くことができそうだ。たとえばKPIツリーと、それに紐づく目標というのは「メタ合意パターン」のひとつとして解釈することができそうだ。組織としてひとつのKPIツリーを設定するということは、とりもなおさず、どのようなKPIを設定し、それらがどうつながっているべきかについて、組織内で取られた合意を形式化することにほかならない。また、それらのKPIに紐づいた目標を設定するということは、ある期間において達成すべき成果についての合意を取ることにほかならない。

たとえばKPIツリーを「メタ合意パターン」として使うことで、「どの指標が重要で、どの指標をどこまで上げるかについては合意を取りました。手段については合意はいりません、好きな手段で指標をあげてください」というメタ合意を取り付けることができる。逆にいうと、KPIツリーを作って指標に対しての目標を設定したにも関わらず、目標達成のための施策についていちいち合意が必要になる場合は、KPIツリーをメタ合意パターンとしてうまく使えていないと見ることも可能そうだ。

余談として、「どのような手段を使うかについて合意はいりませんよ」という場合にも、ガバナンスを効かせることは必要であろうが、ガバナンスを効かせることと全てに対して合意が必要になることはまた別のものだと思うので、ここではガバナンスについてはスコープ外としている。

重ねて言うが、常にどんな組織、チームにもKPIツリーが「メタ合意の正解のあり方」になるとは言っていない。メタ合意のパターンの一例として眺めてみたにすぎない。

こう書いてみると当たり前のことのように思えるが、意外と「メタ合意」がないせいで物事がうまく進まないという組織やチームは多いのではないだろうか。とくに「決められない」「どこまでやっていいのかわからない」「毎回合意を取っていて大変」みたいな感じで物事がうまく進まないときに、自分達はどのようなメタ合意のもとに仕事をしているのか、あるいはそもそもメタ合意が存在するのか? ということを考えてみても良いのかもしれない。