スガシカオの名曲『アシンメトリー』には、「半分に割った赤いリンゴのイビツな方をぼくがもらうよ」という歌詞が出てくる。どこかでスガシカオ本人が、「このフレーズは、男の不器用な優しさがうまく表現されていてうまく書けたな、と思っていたんだけど、"半分に割ったんだから片方が歪ならもう片方も歪なんじゃないの?"と突っ込まれて"そうじゃん!"と気づいた。図らずも男のひとりよがりな浅はかさを表現することになってしまった」というようなことを言っていた覚えがあるのだけれど、それがどこだったかうまく思い出せない。スガシカオ本人がそう言っていた、というのもどこかでなんかの記憶がごっちゃになっているだけかもしれない。それはともかく、ぼくはこのエピソードが結構気に入っている。
しかし、である。「半分に割ったんだから片方が歪ならもう片方も歪なんじゃないの?」というツッコミは果たして正しいのだろうか? たしかに、りんごを「パカっ」と半分に割ったとき、片方が歪な形をしているのであればもう片方も歪になるというのは直感的には正しそうに思える。しかし、まずは話を簡単にするために、円で考えてみよう。いま、原点Oを中心とし、半径1の円Aがあるとき、座標(0,1)を通り、なおかつ中心が(0,a)ただし a > 0かつ a < 1であり、面積が円Aの半分であるような円を考える。このとき、円Aと円Bは以下のように描くことができる。

これは、もとの円の面積を半分にし、片方が歪で片方が正円であるような分割方法である。これを立体にまで拡張することで、「半分に割った球の歪な方と球体のほう」という分割が可能なことは自明である。つまり、こういうことである。

つまり、「半分に割った赤いリンゴのイビツな方」と「そうでない方」というのは存在できるので、スガシカオさんは「図らずも男のひとりよがりな浅はかさを表現することになってしまった」と言う必要はないわけである。ひとりよがりのロマンチストの浅はかな男たちは、救われたわけである。しかし、こんなことを考えている人間はかなり救われないバカであるかもしれない。