アマチュアバンドこそセルフレコーディングしようぜって話

2023年度を迎え、所属するバンドも新しい音源の制作としてレコーディングを開始しました。わたしの所属するバンドは、2度ほどいわゆる「エンジニア付きレコーディングスタジオ」でレコーディングをしたのですが、そのあとの音源制作は、基本的に私がエンジニアをしてDIYレコーディングを行っています。わたしがバンドでDIYレコーディングを始めたときは、まだ音楽のお仕事でお金をもらい始める前のできごとなので、まごうことなき「アマチュアによるDIYレコーディング」です(でした)。

さて、ところで、エンジニアさん付きのレコーディングプランの価格を調べてみたことがありますか? 調べるとみなさんびっくりされると思います。たとえばスタジオノアのレコーディングプランでは、スタジオ代に追加で ¥24,200- 支払えば、きちんとしたエンジニアさんが6時間もレコーディングを行ってくれます。高い? いえいえ、サウンドエンジニアはれっきとした専門職であることを考えると、破格のお値段だと言えるし、5人バンドだったら一回飲み会を我慢すれば十分に支払える金額ではないでしょうか?

それなのに、なぜ、わざわざ、絶対にプロエンジニアよりいい音で録れるはずがないのに、アマチュアDIYでセルフレコーディングなんかを始めたのか。それは、「いい音」と「好きな音」は違うからです。正直、ハウスエンジニアにおまかせすれば、「素早く、しかも良い音に」仕上がります(もとの演奏の音がよければね!)。なのですが、これが音楽の面白いところで、「良い悪い」と「好き嫌い」は独立した軸なんですよね。つまり、「一般的に良い音であると認識されるし、好きな音」「一般的に良い音だと認識されるけど好きじゃない音」「一般的には悪い音だと認識されるだろうけど好きな音」「一般的も悪い音だと認識されるし嫌いな音」がある。このとき、ハウスエンジニアさんに作業をおまかせして「一般的に良い音であると認識されるし、好きな音」を目指そうとすると、「好きな音」を言語化し、エンジニアさんにお伝えする必要があります。しかも限られた時間の中で!! これは実は相当に難しいことです。

さて、これがDIYの場合は? 当然経験が浅いうちは「良い音」を作るのが難しいのですが、試行錯誤して研究していけば確実に「いい音」を作れるようになっていきます。そして、自分(たち)でやるなら、自分(たち)の時間が許す限り、時間に追われずに「好きな音」をじっくり追求することができます。正直言って、最初のDIYレコーディングや、まだお金をいただいていない頃に友人、知り合いから(勉強半分で)請け負ったレコーディングの音源は「好きな音」にも「いい音」にもできませんでした。けど、回数と反省を重ねるうちに、「プロよりいい音じゃないけど、自分が好きな音」は作れるようになっていきました。バンドの2作目のDIYレコーディングなんかはプロのエンジニアが限られた時間でやった仕事よりも、「いい音ではないけれど自分の好きな音」に仕上がっています。いま録音しているDIYレコーディングの作品は、「ハウスエンジニアが限られた時間でやった仕事」とおなじくらい(というか時間かけられるので、それ以上に)いい音になっている自信がありますし、好きな音を狙って作れています。(余談ですが、わたしがお金をいただく仕事で時間ごとじゃなくて作品ごとでお金を頂いてるのも、「限られた短い時間内に及第点出す」という技術がまだ未熟だから、というのがある。逆に言うと時間をかけることでちゃんとクオリティは担保しているし、今はさまざまな実績がちゃんとある)

さて、わたしは今、サウンドエンジニアとしてはお金を頂くようになりました(それだけで食っていけるには程遠いっていうか機材代等考えると赤字ですが……)が、「バンドマン」としてはアマチュアです。アマチュアってことは、「売れなくていい」ってことです(!)。クライアントからお金を頂いて、クライアントの満足ではなく自己満足のための仕事をするのはタコのやることですが、アマチュアのいいところは「自己満足でいいこと」なんですよね。そうなってくると、プロのミュージシャンだったら「悪いけど好きな音」と「良いけど嫌いな音」を比べたときに後者を取るべきだと言えるけど、アマチュアの場合、「いい音」よりも「好きな音」を優先して良いんです!

そうなってくると、これはもう「アマチュアこそ、セルフでDIYレコーディングをしよう」という話になってきませんかね。そういう動機で、わたしはDIYレコーディングを始めました。やってみたら、リスナーとしての耳も育ったり(楽器を弾けるようになると、いままでわからなかったような音楽が楽しく聴けるようになったりしません? それと同じことが起こる)、「ここまでできるようになったらお金もらっても許されるのでは……?」からの音楽仕事でのリピーター様獲得、自分の手がけた作品がSpotify公式プレイリスト入りなど、さまざまな良いことが起こったりもしたので、なんにせよ「録音物作り」に興味があるアマチュアバンドマンにとっては、セルフレコーディング、おすすめです。

「一緒にレコーディングに入って、やり方教えてくれない?」みたいな話も全然請け負うので、もしよかったらご相談くださいね!(最後宣伝になってしまった)