フジゲン製テレキャスモデルにトーンカットスイッチをつけた

フジゲン製のテレキャスモデルを持っていて、メインギターというわけではないけど、メインの次くらいに編曲仕事で使っている。このギターはアッシュボディにメイプル指板、見た目もブラックガードを意識したスペックになっている。現代のテレキャスというと「ギャリン!」という音のイメージが強いが、よく「古いテレキャスは音が太い」なんて言われたりもする。このテレキャスは多分その「太い音がするテレキャス」を意識して作られていて、かなり低域もしっかりと鳴ってくれるし「ギャリン」というよりも「ズドパリン」としたサウンドになっていて、古いソウルを好む私にとってはベストマッチなテレキャスで気に入っている。

一方、編曲仕事ではいわゆる「邦ロックサウンド」が求められることもあり、AC30系のアンプで「ギャリーン」と金属的で攻撃的な音を鳴らす必要に迫られることもある。また、わたし自身たまにそういう音が欲しくなることもある。いままでは録音後にEQで3khzくらいをブースト、400中心にそっから下くらいのローミッドを適度にカットしてやることでなんとかそういう感じの音を作ってきたのだけれど、アンプをマイキングするようになってからはとくに、EQのブーストによってリアルな空気感が損なわれることが気になってきた(ローをカットするのはあんまり影響ないんだよな)。

じゃあ現代的なテレキャスを一本買いますかね、つってテレキャスをポンと一本買えるなら苦労はしないし、最近エフェクター自作に入門した結果回路をいじることに対してもハードルが下がってきていることもあり、「トーン回路のバイパスしてみますか」という感じで、トーンポットをプッシュプルに交換、プル時にはトーン回路をバイパスするように改造してみた。

エレキギターのトーンは、可変抵抗とコンデンサを使ってローパスフィルタを形成し、抵抗値の変化によってグラウンドに捨てられる高域の量を調整するような回路になっている。このとき、トーンポットをフルテンにしていても、微量の電流はコンデンサ側に流れて、微量のハイカットが行われている。これはべつに不具合ではなくて、それ含めてサウンドデザインとなっていて、シングルコイルはジャキジャキしすぎるからちょっとハイがたくさんカットされる容量をつけといて、「トーン10でも耳にいたくないサウンドにしよう」みたいなことが考えられていいる。

で、このトーン回路をバイパスしてやると、「トーン10よりもさらに明るい音」が得られるわけだ。一番簡単な改造は、常にトーン回路をバイパスするように配線しなおすことだ(多くの場合コンデンサの足をぱちっぱちっとカットしてやればいいが、たまにそれだけだと音がでなくなっちゃう配線になってるものもあるので要注意。ちゃんと自分のギターの配線確かめてからやろう)。とはいえ、ぼくはトーン回路通ったサウンドも気に入っていて、トーン回路通ったサウンドもトーンカットも両方ほしいわけで、この方式は使えない。そこでトーンポットをプッシュプルスイッチ付きのポットに変更して、プッシュ状態のときはトーン回路を通るように、プル状態のときはバイパスするようにと配線をしなおした。ついでにコンデンサもいわゆるオレンジドロップに変更してみた。

正直コンデンサの違いはおまじないレベルだと思う。容量が変わればそりゃ音は明らかにかわるんだけど、容量同じでコンデンサの種類変えてみたところでそこまで音に違いは……。まあこれはわたしの耳が悪いだけかもしれない。一方、トーンカットには明らかに違いが出る。回路が変わってるんだからあたりまえなんだけど。少なくとも狙った方向性の違いはしっかり出ている。

EQを挿して、トーンカットなしのフルテンのとトーンカットありをくらべてみると、以下のようになっており、狙った周波数がきちんと出てきてくれていることがわかる。トーンカットなしのフルテンでは2kHzあたりではすでに減衰が始まっているが、トーンカットしたほうは3kHzくらいまでは減衰が始まらない。

トーンカットなしのトーンフルテン。2kHzあたりではすでに減衰が始まっている
トーンカットなしのトーンフルテン。2kHzあたりではすでに減衰が始まっている

トーンカット。3kHzあたりまで減衰が始まらない
トーンカット。3kHzあたりまで減衰が始まらない

こうして、トーンカットを切り替えることで「ギャリン」も「ズドパリン」も手に入るようになった。ポットとコンデンサ合わせても2000円かかっておらず、お得だったのではないでしょうか。