Q観たから感想書く

ひとことで言うと、普通のアニメだった。普通のアニメとして面白かった。

ぼくにとっては旧エヴァはATフィールドをめぐる物語だった。個を個たらしめてるATフィールドは、それがあるせいで絶対にひとと分かり合うことなんてできなくて、でも、それがあるからこそ他人の存在があって、ATフィールドは自分も他人も傷つけるけど、その傷や痛みがなければそれは他人や自分がいないのと同じなんだ、でもやっぱり傷つくのは嫌で、というぐるぐる回る葛藤の物語だった。当時ぼくにとってその葛藤は他人事ではなくて、その堂々巡りでほんとうにどこにも行けなくなってしまう自分とシンクロしていて、その痛みや傷をもったまま、「祈りみたいなものなんだ」と言って他人のいる、ある種救いのない世界に帰っていくシンジくんは、リアルで情けない、でもれっきとしたヒーローだった。少なくともぼくにとっては。

だから、序、破を見たとき、そこにあったのが無根拠に他人と信頼しあっている、ATフィールドをめぐって傷つくことのない世界で、すごく失望した。「その痛みがない中で仮にシンジくんが成長したり救われたとしても、ATフィールドに傷ついていた旧作のシンジくんは決して救われないじゃないか」とさえ思った。

で、Qである。相変わらずシンジくんはまわりの大人(というか主にゲンドウ)のわがままに翻弄されて傷ついてはいるけど、べつに彼の主な痛みは他人との関わりの中で着いた傷ではない。受け入れたい、受け入れられたいのに、他人は他人だからどうしても分かり合えない、とかそういう痛みじゃない。もっと別のものに苦しんでいる。

それを見て、ぼくは、もう、諦めてしまった。「あ、エヴァにぼくは置いて行かれたんだ」と理解した。もう、エヴァはぼくと関係ない、普通のアニメになってしまったんだ、ぼくや旧シンジくんは旧エヴァに取り残されたまま、作品だけが新しくなっていくんだ、と、ようやく理解した。

そう理解したら、もう、ただの普通のアニメとして楽しむしかない。そういう風に観れば、みんなが共有できるツッコミどころとか適度にちりばめられた象徴読み解きゲームとか、まあ良くできたアニメですねというか、文句なしに面白いです。

でも、ぼくはぼくを置いて行った新劇場版を許すことは多分今後ずっとできないだろうし、面白いし続きは楽しみにしてるけど憎み続けると思う。